戸建てに太陽光発電、つけたほうが良いの?

これからマイホームの新築やリフォームを検討されている方の中には、太陽光発電の設置を検討している方もいらっしゃるかもしれません。
太陽光発電には、自家発電によって電気代が節約できることや余った電力を売ることができるなどのメリットがある一方で、導入費用が高額であることや、故障などのリスクもあります。

今回は、戸建てに太陽光発電を設置するメリットとデメリット、太陽光発電の設置にかかる費用、太陽光発電を設置する際の注意点などについて解説します。

住宅用太陽光発電システムとは

最近は、屋根に太陽光パネルを取り付けている住宅を見かけることが多くなりました。しかし、太陽光パネルから電気が作り出される仕組みや太陽パネルを設置している住宅が増えた理由を説明できる方は少ないのではないでしょうか。
住宅用太陽光発電システムの仕組み、太陽パネルを設置している住宅が増えた理由について説明します。

住宅用太陽光発電の仕組み

太陽光発電とは太陽の光を利用して電気を作る発電方法です。
住宅用の太陽光発電の基本的な仕組みは、屋根に取り付けたソーラーパネル太陽電池モジュール)に太陽光が反射することで電気を作り出すというものです。
太陽光発電は、一般家庭のような小規模な建物でも導入しやすく二酸化炭素を排出することがないクリーンなエネルギーとして近年注目されています。

東京都では設置が義務化

東京都では2030年までにカーボンハーフ(CO2排出量を2000年比で半減させること)の実現に向け、新築住宅などへの太陽光発電設備の設置を義務付ける内容を盛り込んだ「環境確保条例」改正案が2022年12月に可決され、2025年4月から施行される予定となっています。
この条例の対象となるのは既存の住宅や住宅を新築する個人ではなく、大手ハウスメーカーなどの事業者です。また、狭小住宅や日当たりの悪い住宅など、太陽光発電に不向きとされる住宅には設置しないという判断も可能です。

東京都以外では、2023年現在、京都府京都市群馬県太陽光発電の設置が義務化されています。政府の方針としても、2030年までに住宅の6割に太陽光発電の設置を目指すとしているため、今後、さらに太陽光発電の設置を義務化する自治体が増えていく可能性があります。
義務化といっても、現時点では罰則規定は設けられておらず、対象も事業者なので、個人が新築する住宅に太陽光発電設備を必ず設置しなければならないというわけではありません。しかし、近い将来、新築住宅には太陽光発電が設置されているのが当たり前という時代になる可能性はあります。

戸建てに太陽光発電を設置するメリット

政府の方針や自治体が義務化していく流れもあり、今後ますます普及が加速することが予測される太陽光発電ですが、設置する側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

電気代を節約できる

太陽光発電を設置するメリットの一つとして、電気代を節約できることが挙げられます。
太陽光発電で作り出された電力は家庭で利用できるので、その分の電力を電力会社から購入する必要がなくなります。その結果、電力会社に支払う金額を抑えることができます。

売電によって利益を得られる

利用しなかった分の電力については、電力会社に売却して利益を得ることが可能です。
詳しくは後述しますが、FIT制度による電力の買取価格は2023年現在、それほど高値とはいえませんが、電気代の節減分と合わせた経済的なメリットは大きいと考えられます。

停電時に利用できる

災害や停電時などに電力会社の送電がストップしても、太陽光発電による電力は利用することが可能です。
パワーコンディショナーの自立運転機能を利用するため、使用できる電力は1500wが上限となるものの、携帯電話の充電やテレビ、ラジオ、冷蔵庫や洗濯機など複数の家電の利用が可能なので、災害時には役立つでしょう。

二酸化炭素の排出を抑え環境に配慮できる

前述したとおり、太陽光発電は発電の際に二酸化炭素を排出しない、環境にやさしいクリーンな再生エネルギーといわれています。
環境を守ることは、地球の未来や子供の将来を守ることにつながります。日々消費する電力を環境にやさしいものに変えることは、環境保護の観点から考えても良いことだといえるでしょう。

戸建てに太陽光発電を設置するデメリット

太陽光発電の設置にはメリットが多いですが、デメリットも存在します。戸建てに太陽光発電を設置する際のデメリットについて説明します。

導入コストが高い

太陽光発電を設置する際には、当然のことながらコストがかかります。電気代の節約や売電の利益によって長期的に見れば元は取れるはずですが、先行投資が必要となります。

メンテナンスが必要

太陽光発電は、2017年4月1日のFIT改正法により定期的なメンテナンスが義務化されています。住宅用であっても、売電する場合は最低でも4年に一度、また設置の1年後にメンテナンスを行う必要があります。
メンテナンスの費用は一般的に1万円~5万円程度ですが、メーカーや設置業者の保証内に含まれている場合もあります。メンテナンスや修理にかかる費用や保証の範囲などアフターサービスの内容はメーカーや施工業者によって大きく異なるので、契約時に確認しておくことをおすすめします。

発電量は天候や季節に左右される

太陽光という自然のエネルギーを利用しているため、発電量は天候や季節によって大きく左右されます。日照時間が長く晴天が多い4月~5月は発電量が多く見込めますが、雨の多い梅雨時期や、日照時間の短い11月~2月は発電量が落ち込みます。
冬場は電力の消費量が増える季節なので、その時期に発電量が少なくなるのは仕方ないことですがデメリットといえるでしょう。

屋根の形状や立地によっては設置できない

太陽光発電は、一定数のモジュールを設置する必要があるため、十分な面積のない屋根には設置できません。他にも、勾配の激しい屋根、垂木や野地板のない屋根には取り付けることができません。また、銅板葺き屋根は電蝕という電気化学反応を起こすことで設置面が錆びて劣化する可能性があることから設置できません。
他にも、海の近くの物件や築25年以上の物件には設置できない可能性があります。
また、北向きなど屋根の角度によっては発電効率が落ちることから設置をおすすめできない場合もあります。設置する方角によって反射光などにより近隣住宅とトラブルになることもあるため注意が必要です。

太陽光発電の設置にかかる費用

太陽光発電を設置するためにかかる費用が気になるという方も少なくないのではないでしょうか。太陽光発電の設置にかかる費用について説明します。

(1)設置費用の相場


経済産業省が発表した令和5年度以降の調達価格等に関する意見によると、住宅用太陽光発電の設置費用の相場は新築の場合、1kwあたり25.9万円(2023年度の想定値)となっています。内訳としては、太陽光パネルが55%、工事費が27%です。これを参考に計算すると5kwの太陽光発電システムを設置した際の費用の相場は約130万円となります。
ただし、これは経済産業省による過去データを参考にした想定値の相場価格に過ぎません。太陽光発電はメーカーや設置場所の形状、屋根の材質などによって大きく異なります。相場は、あくまで目安として捉えておくようにしましょう。
また、これは新築時に設置した場合の相場です。既存の住宅に後付けする場合は、新築より若干高くなる傾向があるので注意しましょう。

太陽光発電の設置にかかる費用は決して安いものではありませんが、以下のような補助金助成金を活用することにより費用負担を軽減できる可能性があります。

① 国の補助金
2023年現在、国が行っている支援事業の中で太陽光発電の設置のみで利用可能な補助金はありません。しかし、太陽光発電の設置に加えて、ZEH、または次世代ZEH+の認定を受けることで申請が可能となる補助金として以下のようなものがあります。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、エネルギー収支がゼロ以下になる家のことをいいます。つまり、太陽光発電などを設置して家庭で電力を作り出すと同時に、住宅性能を向上させて消費する電力量を減らし、電力消費の収支をゼロ以下にするということです。
新築で太陽光発電の設置を考えているなら、住宅性能を向上させてZEHにすることを検討してみてはいかがでしょうか。

2023年のFIT制度による買取価格

太陽光発電については、導入コストだけでなく、売電による利益も気になるのではないでしょうか。
太陽光発電で作り出された電力は、2012年に施行されたFIT法によって加入年度から10年の間、固定価格で買い取られることとなっています。

実際に元は取れる?

太陽光発電の設置費用は、一般的に10年程で元が取れるといわれています。
ただし、導入にかかる費用や発電量、メンテナンスや修理にかかる費用などは個人差が大きいですので、確実に何年で元が取れると断言することはできません。
ただ一つ明らかにいえることは、長く利用すればいずれは元を取ることができるということです。太陽光パネルの耐用年数は25年~30年といわれています。定期的にメンテナンスを行い、できる限り長く安定して利用することを目指すようにしましょう。

太陽光発電を導入する際の注意点

太陽光発電を導入する際の注意点について説明します。

見積もりは複数社で取る

太陽光発電の設置費用は、メーカーや設置業者によって大きく異なります。設置を検討する際は、複数の会社から見積もりを取った上で比較することをおすすめします。

家の新築と同時に導入する場合は、建築を依頼しているハウスメーカー工務店に依頼することも可能です。ハウスメーカー太陽光パネルを付けるメリットとして、保証をまとめられることや、住宅ローンに組み込むことができるということがあります。ただし、ハウスメーカーに依頼すると価格が割高になる傾向があるため、費用を抑えたい方は専門の業者に直接依頼することを検討してもよいでしょう。

信頼できる事業者に依頼する

太陽光発電の導入後に以下のようなトラブルが発生することがあります。
・電気配線に不具合があったために故障した
・発電量が大幅に減少した
・雨漏りするようになった
このようなトラブルの原因の多くは、施工会社の施工ミスです。施工ミス太陽光発電の保証ではカバーされないため注意が必要です。
トラブルを防ぐためにも、太陽光発電を設置する際は、販売店や施工会社の過去の実績を調べるとともに、各メーカーから施工認定を受けているかについて確認することをおすすめします。